練習ではできている動きが、試合になると崩れてしまう。
それは努力不足でも、集中力の欠如でもありません。
多くの場合、問題は「動きそのもの」ではなく、「動きを制御する仕組み」にあります。
本記事では、モーターコントロールという視点から、動きが安定しない理由と、その改善の方向性を整理します。
1. モーターコントロールとは何か
1-1. 「鍛えた体が使えない」本当の理由
筋力や柔軟性、技術が十分にあるにもかかわらず、動きが安定しない選手は少なくありません。
このとき問題になっているのは、筋や関節そのものではなく、それらをどう使うかを決める神経系の働きです。
- どの筋を、どの順序で、どの強さで使うか
- 予測と実際のズレをどう修正するか
これらを統合的に担っている仕組みが、モーターコントロールです。
1-2. モーターコントロールの定義
モーターコントロールとは、運動を計画し、実行し、必要に応じて修正する一連の制御過程を指します。
同じフォーム、同じ筋力条件であっても、動きの質が日によって変わるのは、この制御過程が常に変動しているためです。
2. なぜ練習の動きは試合で再現されないのか
2-1. 試合では「正解の動き」が存在しない
試合中の動きは、相手、シャトルの速度や角度、時間的制約といった多くの不確実性の中で生じます。
そのため、あらかじめ決めた「正しい動き」をそのまま出すことは構造的に困難です。
2-2. フォームを意識しすぎると動きが崩れる理由
動作中に体の部位を強く意識すると、注意は内側(内的注意)に向かいます。
多くの研究で、内的注意は動作の自動性を低下させ、動きをぎこちなくすることが示されています。
2-3. ミスが増えるのは集中力不足ではない
試合でミスが増える場面の多くは、集中力の問題ではなく、
本来自動化されていた制御に意識が介入してしまうことによって起こります。
3. モーターコントロールを支える主要理論
3-1. 自由度問題とベルンシュタインの視点
モーターコントロール研究の基礎を築いたのが、[ニコライ・ベルンシュタイン](chatgpt://generic-entity?number=0)です。
彼は「同じ動きは二度と起こらない」と述べ、人の動きが常に変化することを前提に理論を構築しました。
人体には非常に多くの自由度(関節・筋の組み合わせ)があり、
それをすべて固定しようとすると、動きはかえって不安定になります。
3-2. 内部モデルと予測制御
高速な動作では、感覚フィードバックを待っていては間に合いません。
そこで用いられるのが、内部モデルによる予測制御(フィードフォワード制御)です。
3-3. エラーは排除すべきものではない
現代の理論では、エラーは単なる失敗ではなく、
制御を更新するための重要な情報と考えられています。
4. バドミントンの動きに当てはめて考える
4-1. フットワークが安定しない理由
毎回異なる状況で、毎回同じ形を再現しようとすると、制御は破綻しやすくなります。
安定したフットワークとは、形が同じであることではなく、
結果にたどり着く過程を柔軟に変えられることです。
4-2. 良い選手ほど毎回違う動きをしている
上級者の動きをよく観察すると、細部は毎回異なっています。
それでも結果が安定しているのは、制御の原理が安定しているためです。
5. 明日から変えられる実践ポイント
5-1. 正解の動きを探さない
- フォームを一つに固定しすぎない
- 結果に到達できればOKとする
5-2. 意識の向け先を外に置く
- 体の部位ではなく、シャトルや相手を見る
- 動作は結果に従って自然に変化させる
5-3. ミスを消す練習をやめる
ミスをゼロにする練習ではなく、
ミスから素早く修正する練習を取り入れることが重要です。
6. まとめ
動きが安定しない原因の多くは、能力不足ではなく制御の問題です。
モーターコントロールを理解することで、
練習の動きが試合で再現される可能性は大きく高まります。
動きを「作る」のではなく、「育てる」。
その視点が、次の成長につながります。


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